個人事業主として設計事務所を自宅で開設
「勤め人はもうムリ」と思い、過去に勤めていた会社の先輩が独立開業していることを思い出し、携帯電話に残っていた電話番号にすがる思いで掛けました。(その先輩のことは下記記事の中ほどで触れています。)
すると「仕事ならいくらでも回せるよ」と懐かしい調子のよい声。
すぐに個人事業主および青色申告の手続きを税務署と市役所でして、設計仕事を受注しました。
しかしこれがまた激しいのです。
設計だけではなく、部品が出来上がると組み立てから試運転はもちろん、改善や手直し作業すべて外注先である私がやらねばならないのです。
ケガもしますし、報酬はすずめの涙ほど。挙句の果てに仕事があったりなかったりして、4カ月ほどで個人事業主”ごっこ”をたたみました。
その分野でよほど一流の”うで”を持っていて、自分主体で動ける自信があるならいいのですが、ただの「請け負い仕事」での個人事業はやめておいたほうがいいです。
サラリーマンと変わりない、いや収入が不安定なぶんサラリーマンよりも悪いです。
コンクリート二次製品の会社に就職
次なる会社は・・・。
49才になる私に選べる会社はありません。
会社というより、もはや”職”がないのです。
「機械設計」と言うと手に職があるように聞こえますが、所詮(しょせん)一(いち)会社員です。
一流のデザイナーや建築家ではありません。こき使われて捨てられる会社員です。
このように、この頃にはかなり自分を卑下(ひげ)するようになっていました。
実際、履歴書を郵送しても、持参しても面接してくれる会社さえありません。
10社、15社とトライしなければなりませんでした。
そして行き着いたのが、鉄筋コンクリートの二次製品を作っている会社の下請けでした。
「コンクリートの二次製品」というのは、工場であらかじめ製作して現場に運んで組み立てるブロック状の鉄筋が入ったコンクリート製品のことです。
身近なものでは側溝、護岸、橋梁、擁壁(ようへき)などの部品があります。取引先は官公庁が主ですが、私が入社したのは親会社に100%おんぶにだっこの小さな会社です。しかしエンドユーザーが官公庁なので潰れる可能性は極めて低いでしょう。
ここも親子で会長、社長をやっている同族会社でしたからイヤな予感がしていたのですが、やはり2年と持ちませんでした。
「コンクリートの二次製品」とはどんな種類があって、どんな使われ方をするモノなのかを知ることができただけです。
自分の短所を認識する
ここまで記事を書いてきて、だんだんとキーボードを打つ手が重くなり、胸が苦しくなってきました。
転職を繰り返してきた当時の情景がよみがえってきたからです。
楽しい思い出よりも、自分の不甲斐(ふがい)なさや短気なところ、自分勝手な正義をだれかれ構わず振りかざすところ、などが浮き彫りになる・・・。
自分自身の悪いところが、こうして”書く”ことによって明確になります。どのくらい”弱い”人間なのかも。
これは二、三回、転職されて悩んでおられる方も試す価値アリかなと思います。もやもやして悩んで悶々としている原因がどこにあるのか、紙なり、パソコンなりに今までの自身の変遷を書き出してみるとハッキリしますよ。
ウソ、偽(いつわ)りを書こうとすると自動的に手が止まりますし(笑)。
そして「失業者」になった
話を元に戻します。
このあともう一社だけ設計事務所に入れてもらったのですが、試用期間だけで去りました。高度な強度計算が必要な会社で付いていけなかったのです。
この最後の設計事務所のときに、不動産投資関連の書籍を貪(むさぼ)るように読み始めました。51才になる年です。
こうしてついにナカシマは「本格的な失業者」になりました。
今までは求職のためにハローワークを訪れていましたが、この時ばかりは「失業給付」を受給する手続きを開始するためにハローワークを訪ねました。
そして「不動産投資」に残りの人生を捧げる決意で失業給付を受けながら、不動産投資の勉強を始めたのです。2015年の晩秋のことです。
また設計をやりたいとは思わない
30年ほどの会社員生活の中で、数多くの設計業務をこなしてきました。
自分が苦労して設計して製作された機械のうち、いくつかが日本や世界の工場で活躍している姿をふと思い浮かべると、自分のことをわずかですが誇らしく思うことができます。
プロ・スポーツ選手などが引退したあとに「辞めてみて初めて、このスポーツが心の底から好きだったのだと実感できた」といったコメントを発することがあります。
私は不動産賃貸事業をするために設計業務から離れて3年以上経ちますが、機械設計業務をまたやりたいという感情は湧き上がってきません。
「嫌いではないけれど、そこまで好きではない」ということなのでしょう。
まとめ
設計に限らず今までサラリーマンで経験してきたことは、不動産賃貸事業を経営していく上でとても役に立っています。
飲食業も、運送会社も、全然無駄にはなっていません。
合わなかった業種や会社も、「あ、こういうモノは自分には合わないんだ」という事実を自分で試して、知ることができたワケですから。
「転職」という言葉には、昔も今もあまり良くないイメージが付きまといますが、”良い、悪い”はないと思います。
これからの長寿命の社会では、一種類の仕事で50~60年も過ごすほうが難しいという論調も見受けられます。
数種類の職種を経験してちょうどよい、くらいに考えておいたほうがよいのかもしれません。
終わり
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