アスパラの機械を売り歩いていた時代
私はサラリーマン時代、産業機械畑(ばた)で何度か転職しています。
その中に日本全国のJA(農業協同組合)向けの選果機を営業するという職種に就いた時期があります。機械設計が本職でしたが小さな会社だったので電気配線から工作機械を使った部品の製造、営業と一人何役なんでもやっていました。
集荷したグリーンアスパラをサイズ別に選別して、指定した重さ(100gとか150g)に計量した束の首のところに紫色のテープを巻いて出てくるという機械で、能力はおよそ6~7秒に1束出来ていたと思います。
フルセットで6000万円くらいのこのシステムのデモ機を2トントラックに積んで、北は北海道から南は九州の熊本まで社長のかばん持ちも兼ねて走り回りました。
35才くらいでまだ元気いっぱいだった私は、旅が好きなほうですし成果を出すたびに給料や賞与が上がるのもモチベーション維持に貢献していました。
また飲食店経営を目指したけど挫折して夢を断念した後だったので、安定したサラリーマンに戻れたことが嬉しかったのもあります。
グリーンアスパラが日本中のこんなに広範囲で作られていることも驚きでした。
なんでもコメ余りのため、田からの転用作物として適しているとか。
日本中を走り回っていた中でも九州はよく行きました。
福岡、佐賀、長崎、大分、熊本。
そんな中、佐賀・長崎方面を回る時に諫早湾を横目に見ながらトラックを走らせているとニュースで「ギロチン」と話題になった締め切り堤防がイヤでも目に入ります。
私は当時、今ほど政治や経済に関心がなかったのですが、それでも諫早湾問題は時々全国ニュースで報じられていたので「これがあの締め切り堤防か」とその長さや規模の大きさに驚いた記憶があります。
司法同士でケンカしている!
図書館でふと諫早湾問題を取り上げた書物が目に留まると、借りて返って読んだりもしていつも私の心の片隅にこの問題は引っかかっていました。
なぜこんなに気になるのかと申しますと、司法が喧嘩(けんか)しているからです。
諫早湾の干拓は計画構想段階から数えるとおよそ70年前から始まった国の大規模な事業です。
食糧難を解消するための大規模な国策で紆余曲折を経ながら着工にこぎつけたわけですが途中、漁業補償として279億円が支払われたあたりから雲行きが怪しくなります。
裁判所、国、誰も言うことを聞かない?
「漁獲高が年々減るのは湾を締め切ったせいだ、門を開けろ」という漁業関係者と、「せっかく干拓地の塩分が抜けてきたのに開けられたら困る」という干拓地の農業関係者との主張が真っ向から対立します。
そして裁判に発展するわけですが、なんと裁判所同士も真っ向から対立するのです!!
こんなことがあっていいのでしょうか?!
漁業者側の佐賀地裁、農業者側の長崎地裁、それで収まらないから福岡高等裁判所が「国は開門して原因を調査しなさい」と命令しましたが、国はこれに従いませんでした。
すると何が起こったと思いますか?
漁業者と農業者双方に毎日、税金が補償金として支払われているんです。
毎日ですよ?
ネット上の記事をみるとその額、年間3億2千万円だそうです。
漁業者も農業者もお金より日々の普通の生業(なりわい)を取り戻したいだけなのです。
この「諫早湾干拓事業に使われた税金」は環境調査費や関係者への補償費を入れると、現在までに3000億円を超えていると思われます。
なぜこんなことになったのかというと、締め切り堤防が不漁の原因と断定できないからです。(このあたりのことは「諫早湾問題」で検索すればたくさん出てきますので興味のある方は見てみてください。)
”ずさん”なことが多すぎる日本
”杜撰(ずさん)
いいかげんで、手ぬかりが多いこと。”
(パーソナル現代国語辞典より引用)
国や司法の機能が麻痺しているせいで税金が垂れ流されていることがたくさんあります。
年金機構(旧社会保険庁)の「宙に浮いた年金」しかり、最近の厚生労働省の統計問題しかり。
システムが複雑すぎて今も収拾がついていないんじゃないでしょうか。
かといって「すべての社会保障制度を取りやめて”ベーシックインカム”に移行する」という大胆な策も採らないでしょうし。
一度、各官庁の中間管理職の方にでもこのあたりどうなっているのか、聞いてみたい気がします。
ずさんな仕事で国民の血税を使いまくってその場しのぎ、責任は誰もとらない。
一方で”国民の政治への無関心”もこれらが起こる原因のひとつと言えましょう。
まとめ
無駄に使われることが多い、しかもその額たるや一般庶民からすれば天文学的数字とくれば我々小市民は”節税”に励まざるを得ませんね。
私も今まで通り決算で適正に算出された額の税金を納めて、社会貢献のほうは自分所有の収益物件の敷地内だけではなく、周辺道路のゴミ拾いもする形でしていきたいと考えております。
参考資料
国は開門を命じた2010年の福岡高裁の確定判決に従っておらず、代わりに制裁金を支払っている。今回の訴訟はこうした強制執行をしないよう求めて国が14年に提訴した。
国は「確定判決後に事情が変わった」とし、開門しないことの正当性を訴える。具体的には▽漁業者の共同漁業権は既に消滅し、開門を求める権利はない▽13年に開門差し止め決定が出た▽漁獲量は増加傾向に転じた――などと主張する。
これに対し、開門を求める漁業者側は「権利は消滅しておらず、漁業被害も継続している」などと反論している。
一審・佐賀地裁は国の請求を棄却。控訴審で福岡高裁は全面解決を模索して2度の和解勧告を出し、協議も計4回行ったが、「非開門」が前提の内容に漁業者側が反発して決裂した。
これまでに国が支払った制裁金は12億円を超える。ただ高裁は一審判決を取り消し、漁業者側に不利な判決とすることを示唆。漁業者側がよりどころとしてきた確定判決の執行力が失われ、制裁金の返還などに追い込まれる事態も想定される。
(2018.7.28.日本経済新聞デジタル版から一部引用)
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