よく耳にする「モノごとの見方(みかた)を変えてみよ」という言葉、みなさん理解できますか?
なんとなく言わんとすることはわかりますが、具体性に欠ける言葉ですよね。
今回の記事では”機械設計を経験した者が考える「モノごとの見方」”をテーマにしたいと思います。
「設計する」ということ
ある程度スキルを身に付けた設計者であれば、「設計する」と「想像する」はほぼ同義です。
逆に言いますと、完成した姿を”想像”できなければ”設計”できません。
産業機械でも建造物でも、「設計」という職種は”作りたいモノ”をさまざまなルールに則って、大きさ、スピード(←生産能力や工期などいろんな意味での)、強度等が問題無いようにすれば自由に設計できます。
その反面、悩ましい問題にも多々、直面します。
仕様を満たす、安全性を確保する、使いやすい(=ユーザーインターフェイスが優れている)、メンテナンス性が良いことはもちろん、最終的には依頼主が満足する出来栄えになっていないといけません。
断面二次(だんめんにじ)モーメントとは?
材料力学の用語ですが、簡単に言えば構造部材の「変形のしにくさ」を表す指標です。
一例を挙げます。
下図は耐力壁Aが一番奥にある構造物です。
対して、下図は前後方向(L寸法)の真ん中に耐力壁Aが設けてあります。
板厚(いたあつ)TやLの寸法が同じならば上に同じ重さのモノを置いた時の、この構造物の長手(ながて)方向の「変形のしにくさ」はほぼ同じです。
耐力壁Aを最前面に持ってきても、前寄りでも、後ろ寄りでも同じです。
これが「断面二次モーメント」の考え方です。
「上の絵よりも部屋が狭くてもいいから、反対側にも部屋を設けたい」なら下の絵のようにしてもいいということです。
逆に下の絵のように設計されていた場合で「部屋は前面に一つだけでいいから、広いほうがいい」ならば、上の絵のように設計変更すれば良いことになります。
少し見かたを変えてみる
機械設計に限らず、どの業界でもモノごとを見る角度を少し変えてみると問題の打開策がひらめくことがあります。
特に若い社会人のみなさんは頭が柔らかいうちにさまざまなことを経験して自分の”知識の引き出し”をできるだけ増やしておかれると良いです。
30代、40代になってくると頭は固くなる、挑戦しなくなる、妙なプライドが増えるなどで柔軟な対応ができなくなりますからね。
昔の建物は「真面目(まじめ)」だった
建造物でも、機械でも、ソフトウエアでも設計者は皆、その時々で苦労して対象物に対峙(たいじ)して完成させたはずです。
私は築古の一棟ものアパートオーナーとして不動産賃貸事業をしていますが、購入した物件にはそれぞれ、その時代の叡智(えいち)が詰まっています。
屋根裏を覗くと、むしろ現代のアパートよりも材木を多く使っていたり、断熱材も壁はもちろん、天井裏にもびっしりと敷き詰めてあったりします。
これだと夏は涼しく、冬は暖かいです。
各部屋を仕切る界壁(かいへき)も、もちろん屋根まで届いています(笑)。
まとめ
「視点を変える、見方・考え方を少しだけ変えてみる」を考察するにあたって、今日は一般の人には聞きなれない言葉をあえてタイトルに使ってみました。
不動産業界に限らず最近、やたらと国内の不正や不祥事を耳にする機会が多くて、真面目だった頃の日本や設計者として頑張っていた頃の自分が懐かしく思い出されたものですから。
「真面目(まじめ)」を辞書で引くと「まごころがこもっていること。誠実なこと」とあります。
“サービス残業をする”とか”忖度(そんたく)すること”とは違いますので間違えないように気を付けてくださいね。
終わり
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