どこに、いくらかけるか?
不動産賃貸事業(大家業)をしていると、お金をどこに(何に)投じるかを判断する場面が多いです。
火災保険が効く事象の修繕費なら、そんなに躊躇することなく支出できます。あとから実費もしくはそれ以上に戻ってくることが判っているので。(関連記事「大家が付保するべき火災保険のオプションとは?」)
また管理会社提案や自分自身判断で、物件価値を上げるために実施するリノベーションや大規模修繕工事も比較的迅速に判断・実施できます。
それをすることで場合によっては、「家賃を上げて募集する」ことも可能になりますからね。
逆に、「退去後の原状回復工事をどこまでするのか?」は悩むところです。
ハウスクリーニングとエアコンの分解洗浄費用は、一般的に退去精算で退去者から頂けますが、まだそのまま使えそうな照明器具や水栓ハンドルを数千円、数万円出して更新するべきか、クッションフロアに所々(ところどころ)汚れやキズがあるが、この家賃帯のこの立地ならもう一回転してから張り替えようとか・・・。
管理会社を使っている大家さんなら、経験豊富な管理会社の担当者に相談することも可能ですが、最終的にどれを実施するかは自分が決定しなければなりません。
自主管理大家さんなら、まさに孤軍奮闘です。
情報収集→検討→判断→決定→実行、という流れを、可能な限り早く的確に実施していかなくてはなりません。複数の物件に空室があれば、それなりに大変です。
大規模修繕工事費を含めて買う
私は、物件を仕入れる際に大規模修繕工事(主に、屋根と外壁の防水塗装工事)が必要なモノを好んで”購入検討対象”にします。
そのワケは、下記の三つです
・大規模修繕工事が必要なことは、売主および売買仲介業者ともに判っているので結構な指値が通りやすい。
・物件購入費用と大規模修繕工事費用を合算で融資してもらえるので、金融機関での融資手続きの手間が省ける。
・購入直後に大規模修繕工事を実施することで、その後10~15年は大規模修繕工事の心配をしなくて済む。
ちなみに弊社の所有物件で言えば、三つ目の物件、五つ目の物件、そして今年の6月に購入した六つ目の物件がこのパターンです。それ以外の三つの物件は、購入直前に大規模修繕工事が施されていました。
物件価値向上アイテム
大規模修繕工事以外の物件価値向上対策としては、下記のようなモノが挙げられます。
・温水洗浄便座
・浴室乾燥機
・インターネット無料(=設置工事費および月額利用料を大家が負担)
・オートロック
・宅配ボックス設置
・防犯カメラ
・テレビモニタ付きインターホン
・ウオークインクローゼット
・シャンプードレッサー
・敷地内にゴミステーション有り
弊社所有のアパートは1LDKと2DK物件はありますが2LDKや3LDKの、いわゆる”ファミリー物件”は無いので、今のところ「単身者向け」ばかり36戸です。
おそらくですがコロナ禍の影響もあり、そのうち4戸がいまだに空室です。
二年ほど前から、これらの項目の中でも比較的、実施できそうな”「宅配ボックス設置」をやらないといけないのかなあ”と、漠然と考えていました。
私個人は、日々の生活の中でそんなに宅配を利用するほうではないのですが、それでも不在票の後処理には辟易(へきえき)しています。
頻繁にネットで買い物をする単身者にとっては、また配達するほうにとっても「不在時の処理」は無くなって欲しいモノの最たるものではないでしょうか?
宅配ボックスは要設置?
そんな中、弊社所有の物件で、ある変化が表れ始めます。
必要な人は自前で用意する
学生や社会人の単身入居者が、自前で簡易的な「宅配ボックス」を共用部廊下に置き始めたのです。
賃貸借契約上、原則として共用部には私物を置いたり、設置したりしてはいけないことになっています。
しかし、このケースではどうでしょう。
本来、大家が数万~数十万円かけて設置するべき「宅配ボックス」を、入居者自ら数千円で簡易式宅配ボックスを”購入して”、”置いてくれている”のです。
管理会社も何も言ってきませんし、私もこれには目を瞑(つぶ)ろうと思います。
目くじらを立てて規約通りに「共用部に私物を勝手に置くな!!」と入居者に勧告して撤去させることは容易ですが、そうすれば大家が高価で正式な宅配ボックスを設置する羽目になるでしょう。どちらを選択するか、です。
また、別の観点から言えば”その物件の入居者すべてが「宅配ボックス」を欲してはいない”ということです。
”必要と感じている入居者のみが、簡易式宅配ボックスを購入して、玄関前に設置する”、そして”大家や管理会社は特例として、共用部にそれを置くことを黙認する”で良いのではないでしょうか。
実際、今春にインターネット無料化した物件では約半数が利用してくれていません。投資効率が悪いのです。
まとめ
政治でも、会社でも、大家業でも一緒です。
臨機応変に対応する柔軟さが、時に”大家業”には求められます。
毅然(きぜん)とした態度で臨(のぞ)む場面アリ、スルーすべき場面アリ、テレビドラマのような涙ほろりの場面アリ・・・。
むしろ、杓子定規(しゃくしじょうぎ)に物事が運ぶことのほうが稀(まれ)です。
そんなふうに、人情味にあふれた日常が好きな人は大家業に向いているかもしれません。
関連記事:テレビドラマ「十字路」
終わり
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