「その時」は突然、やってくる
「明日、先方に空室内見および外周りを見てもらいます」
収益物件の売買を得意としている不動産さんからある日の午後、突然、上記の電話がありました。
前夜、寝るのが遅くなったのと少々気分が優れなかったのとで昼寝をしていたので、寝ぼけた頭で会話が始まりました。
話の内容と経緯を要約すると下記のとおりです。
・今年の夏に三つ目の物件を2600万円で売りに出したが、あまりにも反響が少ないので売り止めにした。
・その後、もし2500万円で買いたい人が現れたら連絡をくれるよう、仲介業者四社には伝えていた。
・その中の一社が、上記の連絡をくれた。
「ただ、融資が厳しい折でもあり、また金利の高いノンバンクを使うので2000万円でどうかと言うてるんですよね」
悩ましい条件
築38年の鉄骨造二棟もの、1K×12戸アパート。
現在、空室は1戸のみ。
これから修繕費もかかってくるし、家賃が共益費込みで21000円と安いエリアなので、表面利回り15パーセントは欲しいとのこと。
そうして、はじき出された希望買い取り価格が2000万円です。
先方が言わんとすることは、よくわかります。
しかし、こちらにも事情があります。
この”三つ目の物件”は、当ブログでも一番多く登場している物件で、ハード面およびソフト面でさんざん手をかけてきました。
この物件の過去二年間の、支出と収入の関係はエクセルで事細(ことこま)かに記録していて、黒字で終えようとすると、最低でも2100万円で売らないといけません。
なお、この価格には売却にかかる諸費用(銀行の残債返済手数料、各種印紙代、仲介手数料、登記関連費用等)を含みます。
残債自体は1800万円余りですが、失踪事件で踏み倒された分とか、入退去が多かったので、その原状回復費用、各種キャンペーン費用、広告料などがかさんでいます。
物件は気に入ったらしい
次の日の午後。
無事に物件見学が終了した旨、仲介業者から電話連絡が入りました。
物件は気に入ったらしく、やはり2000万円なら買いたいとのこと。
私は少し考えさせてほしいと言いました。
その電話のあと、売るか売らないかを判断するために、数人に見解を求めました。
懇意にしている他の仲介業者
今回の話が来た時に、この業者に2100万円以上で買ってくれそうな人がいたら連絡がほしい旨、伝えていました。少しでも高く売りたいですからね。
そして、その業者というのは、当該物件である「三つ目の物件」を二年前、私に売買仲介して売ってくれた業者であり担当者なのです。
買った直後から設備の不具合やら失踪事件やらで、たて続けに苦労を強いられた私ですが、この担当者とは妙にウマが合って色々と相談に乗ってもらったり、不動産賃貸事業に関するアドバイスや情報をもらったりする仲なのです。
ところが、数百という不動産投資家の顧客を抱えるこの業者でも、私の三つ目の物件に食指を伸ばそうとする投資家はいないとのことです。
家賃が安すぎる、立地がいまいち(出口戦略が難しい)、築古すぎる・・・。これらが主な理由です。
税理士事務所の担当者
顧問税理士事務所の担当者に、いくらで売却すれば法人税を抑えられるか、確認しました。
実は、この担当者には、前期の決算時に「三つ目の物件を売るかもしれない」と伝えて減価償却を前年度、前々年度より多くとってもらっていました。
できるだけ譲渡益と相殺(そうさい)するためです。
私の法人は今年四期目ですが、過去三期は赤字だったので法人税はミニマムの71000円しか払ったことがありません。
そして確認してもらった結果、2000万円以上で売れると税額がミニマムよりも上がりそうとのことでした。
「税額を抑えるために安く売る」ことは、本末転倒であることは重々承知しております。
しかし、今回の案件はいろんな要素が絡み合っています。
この先、どんどんお金がかかる物件
今、買ってくれそうな人が現れたこのタイミングで売らなければ、この先も手出しが必要です。
共用部の鉄製階段の大規模修繕(二棟とも)、地盤沈下の大規模修繕をはじめ、給水・排水の配管劣化もまだまだ爆弾を抱えている可能性があります。
そして、それらの瑕疵(かし)を実際に見て、考えて、覚悟して、買主は「2000万円なら買う」と言っているのです。
今回のこの申し出を突っぱねたら、私の法人は近い将来、運転資金が枯渇して倒産する可能性すらあります。
まとめ
三連休明けに返事をするつもりでしたが、相手の気が変わってもいけないので金曜日の朝、2000万円で手を打つ旨を仲介業者に伝えました。
その日の午後、メール添付で初めて「買付証明書」を”受け取り”ました。
現状有姿、瑕疵担保免責、融資特約付きです。
粛々と事務的にコトが運び、順調にいけば来月初頭には決済かもしれません。
頭をフル回転させた五日間でしたが、決心してしまえばスッキリします。
キャピタルゲインどころか、どちらかと言えば「損切り」ですが、この物件には本当にたくさんのことを勉強させて頂きました。
思い出多い三つ目の物件ですが、感傷に浸っていては「不動産投資」はできませんからね。
いろんな事情があって、売りたい人がいて、買いたい人がいる・・・。これが「不動産投資」なんですよね。
本件につきましては、今後の状況も記事にするつもりです。
関連記事「6.三つめの物件を買えたけど」「7.三つめの物件、満室へ」「失踪事件の詳報」
終わり
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