とても大事な「損害保険」
不動産賃貸事業を営んでいるオーナー(大家)にとって、大事な経費として「火災保険」があります。そして火災保険と同様に、いざという時に自身の財産のみで賄いきれない事態(人を轢いてしまった等)に遭遇した時のために掛ける損害保険として「自動車保険」があります。
ちまたでは、法律で加入が義務付けられている自賠責保険に対する言葉として「任意保険」などと呼ばれていますが、車を所有して運行する方は加入するべきモノでしょう。
今回は、この「自動車保険」のオプション(特約条項)のひとつ、「弁護士費用等特約」について、実際にウチの家族が経験した例を御紹介します。
義母の人身事故を承継したカミさん姉妹
およそ三年前に義父母、カミさんの御両親がたて続けに「ガン」で亡くなりました。
それ自体はとても残念な出来事でしたが、義父母は残された遺族に正の遺産とともに、”負の遺産”も遺(のこ)して亡くなりました。
その”負の遺産”とは、「裁判案件」です。
義母のガンがまだ発見されていなかった4年前。80代前半の義母は、義父を定期健診のために掛かり付けの病院に自家用車で送迎しました。定期健診を終えて帰宅し始めて間もなく、薬を受け取るのを忘れていることに気付いた義母は病院に引き返すことにします。
しかし、義父は「わしは帰るぞ!」と言って、車を降りて家に向けて歩き始めました。
家まで10km以上あります。80代半ばの義父には無茶な距離ですが、そういう無鉄砲なところが義父にはありました。そして言い出したら聞く耳を持ちません。
しょうがないので、義母は一人で病院に引き返します。早く薬を受け取って、歩いているであろう義父を拾いたい義母は焦っていました。大きな病院ですから駐車場整理の係員がいます。
義母の前に立って誘導していた、これまた高齢の係員を、あろうことか義母がアクセル操作を誤ったのか轢いてしまいました!
義母は、普段はマニュアル車である軽トラックを運転するのですが、この時は運転に慣れていないオートマチック車である義父の軽四乗用車を運転していたことも災いしました。
示談(じだん)では済まなかった
不幸中の幸い、その係員の命には別条なかったのですが、かかとや足に大ケガを負いました。
休業補償や、慰謝料など含めて、こちら側の代理人である保険会社と、被害者側の保険会社が長い間交渉していましたが和解には至りませんでした。
そうこうしているうちに、義父が亡くなり、その一年後には事故の加害者本人である義母も亡くなってしまいました。
そして、両親が亡くなった感傷に浸る間もなく、遺族となった私の妻とその姉は、この事故の事後処理を「相続」することになったのです。
幸い、義父名義の事故車には自動車保険が掛けられており、さらに「弁護士費用等特約」も付保されていましたから、保険代理店が懇意にしている岡山市の弁護士事務所に交渉を委託することになりました。
やっと、結審した
加害者、被害者とも、保険会社という代理人が間に立ってくれて、さらに加害者側であるこちらは弁護士事務所も”無償”で表立った交渉を引き受けてくれました。
そのおかげで、私の妻や義姉、その家族は法廷に出頭する必要もなく、弁護士事務所から郵送されてくる提案書に対する意見や承認を電話で伝えるだけで済みました。
しかし、それでも”いつ終わるかわからない、しかも自分たちが起こした事件でもない「裁判」に巻き込まれている”という不快感や不安感は付いてまわります。
相手の言い分や、法廷での経過報告書も随時、弁護士事務所から郵送されてきました。
そして、今年の三月末から始まった本案件は、およそ三カ月後に「和解」に至りました。
当初、大まかな所用期間を担当弁護士に尋ねたときは、「早くても半年は覚悟しておいてください」と言われていたので、早く解決したほうです。
ちなみに、和解金額は2800万円。
ウチのカミさんと義姉で1400万円ずつとなったわけですが、実際に2800万円を支払うのは自動車保険会社です。
これだけ見ても、「自動車保険」という損害保険がいかに我々の生活を助けてくれるかおわかりでしょう。強制加入である「自賠責保険」は被害者が死亡した場合でないと役に立ちません。
自動車保険で付保するべき特約とは?
今回のことで、「弁護士費用特約」がいかに有用であるか、身を持って実感しました。
また、私がお世話になっている自動車保険代理店の担当者から聞いたところでは、実際に人身事故の加害者や被害者になった場合だけではなく、損害金を払おうとしない(自動車保険に加入しているにもかかわらず)輩(やから)に有効だそうです。
無視する相手に、弁護士から内容証明郵便が届くだけで、態度がコロッと変わって真摯に対応してくれるようになるとのこと。
「本当に法に訴えるぞ!」という態度を示すだけで、強気に出ていた相手がビビるそうです。
これらのことからも、以前の記事「必要な保険とは?」で書いた「日常生活賠償責任特約」に加えて、「弁護士費用等特約」もぜひ付けておいたほうがいいオプションということになります。
これらのオプション費用、数千円で、数千万円、場合によっては数億円の損害賠償を賄えるのですから。そして精神的にも実務的にも苦痛な日々を強いられる交渉事もプロ(弁護士)に任せられるのですから。
まとめ
我が家の自動車保険をあらためて確認すると、昨年の更新時に、妻も私も「弁護士費用特約」を外してしまっていました。代理店担当者に慌てて電話して、付保してくれるように依頼しました。
「日常生活賠償責任特約」と「弁護士費用等特約」は、自動車を運行する家族のうち、だれか一人の保険に付保されていれば、家族全員に有効です。
我が家では「日常生活賠償責任特約」は私の保険に、「弁護士費用等特約」はカミさんの保険に付保しました。
人身事故は起こさない、遭わないことが一番ですが、遭ってしまうリスクがあることも事実です。
不動産投資をしている・していないにかかわらず、「自動車保険」と「火災保険」は、生命保険、医療保険、ガン保険、家財保険などとは比べものにならないほど重要です。
終わり
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