別れの季節
三月。
日本では、卒業や人事異動のシーズンでもあり”別れ”という言葉に最も相応しい季節かと思います。
不動産賃貸業の経営者、中でも学生向けアパートを所有しているオーナーにとっては、四年間の若人(わこうど)の成長を見届けてきたことから感慨深いものがあることと思います。
三つ目の物件の学生
加えて、物件への感慨深さと合わせると、より一層感傷的になる自分が居ます。
今年一月に売却した三つ目の物件は、私不動産投資家・不動産賃貸業経営者として成長さえてくれた物件です。
そして、その物件を購入するに当たり無言の進言をしてくれたのが二名の女子大学生入居者です。(関連記事「6.三つめの物件を買えたけど」)
彼女たちも、この春、大学を卒業して地元でそれぞれ就職するところまではわかっています。
一年前までは、彼女らが卒業する暁には、長いこと入居してくれた御礼に、また卒業祝いに商品券でも進呈しようと考えていました。
心境の変化
ところが、ここ一年の賃貸業経営経験で、私の中に心境の変化が生まれました。
1Kの退去があった場合、原状回復工事費用は下(げ)でも十数万、高いと20万円を超えます。
これだけに留(とど)まりませんで、新規入居者が決まったら管理会社経由で仲介業者に広告料が三か月分、オーナーの手出しで支払われます。
しかも、今までさえ借家人有利だったのに加えて、四月一日からの民法改正も相まって、退去者から原状回復工事費用を頂けなくなってきています。そのうえ、敷金もゼロの物件が多いです。多いどころか、ほぼ100パーセントそうです。
つまり、融資を受けて、不動産賃貸業を経営しているオーナーは資金繰りに汲々(きゅうきゅう)としているのが実情です。
私が所有している物件もほとんどが単身者物件ですから、”汲々”度合いは想像に難(かた)くないでしょう。
事業経営である以上、次の入居者を獲得するために原状回復工事やリノベーションは必要と考える範囲で投資することが、優先順位第一位です。
第二位は、入居を決めてくれた仲介業者に支払う広告料や御礼の菓子折り代。
第三位は、私の不動産賃貸業を経営させてくれている支援者である家族への御礼。福利厚生費や経費として多少なりとも還元したい気持ちはいつも持ち合わせています。
そういう経緯もあって、入居者への心付けの優先順位は低くなっていきました。
管理会社の担当者の言葉も影響
当該物件の管理会社担当者とはウマも合っていたのですが、ここ一年の私の心境の変化に伴って、微妙なズレが生じてきました。
具体的に申し上げますと、煙たく感じる場面が出てきたのです。余計なお世話と。
その担当者とは、物件購入時からの付き合いですし、女子大生に勇気をもらって、不動産賃貸業の色々を勉強できたことを、その担当者も知っていますから、ことあるごとに「二人の女子大生も卒業ですね」とか、「別に商品券とかでもなく手紙程度でもいいと思いますよ」とか助言されるわけです。
しかし、そういう気持ちになるかならないかはオーナー自身の気持ちであって、他者から言われてすることではありません。
そんなやり取りが二、三続くと、段々と興ざめしてきて、おそらくは退去しているであろうこの時期でも、結局、二人の女子学生には何もしていません。
まとめ
皮肉なことに、以前の記事「経営の主導権を握っていますか?」に書いた顛末によって、この管理会社の担当者とはあと一年半の付き合いとなりました。
近所に行くことがあれば、退去したかどうかくらいは確認したい気持ちもありますが、今はとにかくあと4戸の空室を埋めるために例年にないくらい忙しくて、気持ちの余裕がありません。
いずれにせよ、賃貸物件のオーナーたるもの、必要以上に入居者にウエットに偏るべきではないと感じています。結局は、自分の首を絞めることになるような気がします。
ドライとウエットのバランス感覚も、不動産賃貸業経営者に必要な素養と感じた次第です。
って言うか、おそらく二人の女子大生は特に何も考えずに粛々と退去していくだけでしょうけどね(苦笑)。ちなみに、卒業する男子大学生退去者が超ドライなのはすでに知っています。残置物が結構あって困っています(爆)。
終わり
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