4.問題児の物件

調子に乗った初心者大家

2016年5月、会社名義でほぼ同時に二つの収益物件(1K×10戸、1LDK×8戸)を取得できたという絶好のスタートダッシュ!

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購入当時はどちらも満室で利回りも12%前後と良かったので、翌月からローン返済が始まりましたがそれでも役員報酬を16万円取れました。

「オーナーチェンジ」という言葉を頭では理解していても、購入した翌月に実際に指定した通帳に所定の経費を差し引いた残りの金額が振り込まれているところを見た瞬間には感動すら覚えました。

これは当事者になってその現象を目撃した人にしかわからない感情だと思います。

「特に何もしないのに本当に毎月収入が通帳に振り込まれるのか。こんな商売があって良いのか?」と不思議な感覚に包まれます。なにかすごく悪いことをしているような・・・。

しかし当然ながら良いことばかりの甘い商売ではありませんでした。

まず、役員報酬の額の設定が甘かったことにすぐ後で気付きます。

それまで苦労を掛け通しだった妻や娘達に良いところを見せようと、また少しでも生活費の足しにと思って16万円を毎月自分の給料にしていましたが、これが大きな間違いでした。

事業を始めて1、2年目はとにかく出費がかさみます。

退去に伴うリフォーム資金、物件を買い進めるための資金、急なトラブルの対処費用、物件取得後、4カ月ほど遅れて請求される不動産取得税など、とにかく現金が要ります。

“資金繰りに苦しむ”という言葉の意味を身をもって体験しました。

社長からの短期借入金として家中の金融資産を現金化(定期預金解約、生命保険解約)して自分の会社に貸し付けました。

この場合は無利息です。(逆に、自分の会社から社長が借り入れる場合は利息を設定しなければなりません。)

結果、最初の2年間は不動産投資のメリットの一つである「複利効果」の恩恵を受けることができませんでした。

「ローン返済金を引いた残りのキャッシュフローはそのままプールしていって、大規模修繕やリノベーション工事など物件価値の向上に使うか、次の物件取得の種銭(たねせん)に回す」というのが本来の不動産投資としてのセオリーであり王道なのですが、当時の私は恥ずかしながら「イエ~ィ、ザ・不労所得~!!」という感じで調子に乗っていたと言わざるを得ません。

そのことに気付いた法人3期目からは役員報酬を顧問税理士事務所の担当者さんにも相談して8万円に半減しました。

この金額設定により所得税は納めなくてよくなりました。

退去の嵐で、原状回復のトレーニング!

また満室だった物件の入居者が次々に退去するという洗礼を受けます。

別に売主(=前オーナー)が雇った”さくら”というわけでもなく、それぞれ理由があっての退去だったのですが、購入して一カ月も経たないうちに退去があった時は焦りました。

リフォーム資金はそんなに無いのですが、時間だけはあったので手弁当で極力セルフリフォームで凌ぎました。

幸いすぐに次の入居者が見つかりホッとしたのも束の間、数カ月ごとに退去が発生しました。

8戸中、常に2~3戸、空室のある状態。

「これが”空室リスク”というものか・・・」

書籍やネットなどの不動産投資リスクでいつも一番上に挙げられる「空室リスク」。

「もう一戸空いたらローン返済が持ち出しになる・・・」

初めての管理会社変更

物件購入時にそのまま引き継いだ管理会社は担当者もいい感じだし、ウマも合うので良かったのですが入居者付けに関してはどうも不得手のようでした。

空室期間が約半年と長かったこともあり、三物件目で入居者付けに実績があった管理会社に思い切って変更しました。(ちなみに、この旧管理会社さんは快く切り替えを受け入れてくれましたが、通常は管理契約書に2年とか3年の間は管理会社の変更は認めない等の文言が記載されています)

変更はしましたが、前の管理会社の担当者とはお互いに近況報告などし合う良き「不動産アドバイザー」であり、友人になっています。

新しい管理会社の努力もあり、私の努力もあり再び「満室」という嬉しい状態に復活したこの物件ですが、最後の空室に入居申込みが入ったところで大きな試練が待ち構えていました。

壁一面、腐っている!

原状回復工事中に、玄関ドアの枠と隣の和室の壁(内、外共)一面が腐っているのが発覚したのです。

昔、雨漏りがあって壁の内部に長い間湿気がこもっていたのが原因と思われます。

幸い白アリまでは発生していませんでしたがかなりの大工仕事が必要となり、懇意にしている工務店さんなので無理を聞いてくれて工事費を安めに抑えてくれました。

「少し足が出るけど、今回は勉強させてもらいます」

と当初見積り通り33万円でやって頂けました!

信頼できる一社と付き合っているとこういうメリットがあります。

購入した直後から2年ほどバタバタした物件ですが再び満室になり、やっと落ち着いてくれました。

と、思っていたらまた新たな問題が発覚しました。

一難去ってまた一難

ある物件に定期清掃に行くと物件近くの家から出てきた人から苦情を受けました。

「最近、お宅のアパートの若い男性入居者が夜な夜な女友達と帰ってきて真夜中に料理を作って食べたり、大声でスキンシップしたりしてかなり近所迷惑だ」とのこと。

入居したての頃にその男性入居者と話したことがありますが、そんな非常識な人には見えませんでした。

一人暮らしに慣れてきて、付き合う友人を間違って人間が変わってしまったのでしょうか。

とりあえずこのことを私から管理会社に伝えて「近隣住民から夜中に騒いでいる入居者がいる、との苦情がある」旨の文書を全戸投函してもらいました。

ちなみに、このような注意文書は勉強のために管理会社からデータでいただいております。

きつくなりすぎないで、かつしっかり注意している文章を作成するのは一つの”技術”だと思います。

その後、近隣住民からも管理会社には連絡が無いようなので当の本人も分かってくれたようです。

このように満室でかつ管理会社にもオーナーにも何もクレームが来ないからといって安心できるものでもありません。

たまには入居者や近隣住民と挨拶したときなどに、なにか変わったことはないかそれとなく探ってみることも不動産賃貸事業では大事なことだと思います。

大家と管理会社は二人三脚で

このようなきめ細かいフォローは人数が限られている管理会社には無理ですので、当初は近県(香川県、広島県など)でも物件を探していたのですが今はもう探しません。

「岡山市内の物件」一択です。

また昔と違って現代の”大家業”は実務を管理会社に任せてオーナーはヘタに動かないほうが良い(オーナー自身の身に災難が降りかかるのを防ぐ意味で)と私も思っていましたが1年,2年と大家業を経験するにつれて、その考えを改めているところです。

必要以上にでしゃばらなくてもよいが、ある程度はオーナーも入居者と関わり「管理会社と二人三脚で不動産賃貸事業を経営していく」というスタンスが必要と今では考えております。

つづく

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