目 次
「サブリース」登場まで
近年、世間一般向けのニュースにもたびたび登場する言葉なので説明不要かもしれませんが、念のため説明させていただきます。
「サブリース」を説明するには、まず「アパート経営の今昔(こんじゃく)」を語る必要があります。
昔の”賃貸業”事情
昔はアパートを所有している地主さんが大家兼管理人で、賃貸借契約の締結、入居者や設備・建物のトラブル対応、家賃回収、退去手続き等、すべての業務をこなしていました。
業務項目を列挙すると大変に思われるかもしれませんがおじいさん、あるいはおばあさんが一人でこなせていたのです。
“家賃回収”と言っても基本的には”店子(たなこ)”(←入居者のこと)が大家さんの家に毎月、家賃を現金で持っていきます。
家賃と一緒に持っていく通い帳(表紙に大きく”通”と書いてあるA5くらいの帳面)に大家さんから受け取りのサインをもらいます。
以上、私の幼少の頃のボロ長屋での記憶です。
家賃はたしか2DK(もちろんすべて和室)で1万円だったと思います。
また滞納があろうものなら大きなほうきを持って”出ていけコラア!”とけしかけた上に家財道具を放り出すなどの、漫画のワンシーンのような光景が繰り広げられた時代もあったでしょう。
エアコンなどの設備は付いていないのが当たり前。
お風呂やトイレが有るだけでも”高級賃貸住宅”でしたから、店子さんよりも大家さんのほうが断然、立場が上だったのです。
潮目が変わった
ところが昭和の高度経済成長期を経て、バブル経済を経験した頃から様子が変わってきます。
「退去の時に経年劣化の部分まで”原状回費用”を入居していた者から徴収することは認めない」という、いわゆる”東京ルール判決”が出されてから大家さんの立場は急降下することになります。
独身者物件の短期退去のたびに繰り返される「原状回復工事」の費用はよほどのことがない限り、大家の負担です。
滞納されても強く言えず強制退去もできない、立ち退き料を出すから出ていってと言っても、出たくなければ入居者は居座ることが可能です。
もともと民法で手厚く保護されている借家人の立場は強くなる一方です。
次第に昔ながらの”大家さん兼管理人”は仕事量、知識量、業務の煩雑さ、精神的苦痛などで増大した負担に耐え切れなくなりました。
「管理会社」という業態、登場!
そこでアパート経営の管理面を引き受ける「管理会社」という不動産業者の新たな業務形態が登場します。
入居者から頂く、家賃収入の5%ほどを自社の手数料として差し引いた残りを大家さんに毎月振り込みます。
管理会社に任せておけば新規入居者募集から退去立会いおよび精算、トラブル対応、定期清掃まであらゆることをやってもらえます。
ただし修繕等にかかった費用(材料代、人件費など)は大家負担です。
定期清掃代も大家負担のところが多いです。
「家賃保証会社」登場!!
さらに時代の流れとともに増加してきた”滞納問題の解決”に特化した業態まで出現しました。
「家賃保証会社」です。
それまでは管理会社が滞納入居者に督促する、あるいは公示送達などの裁判所関連の業務をつかさどっていましたが、あまりにも負担が大きいので「滞納に関する業務」のみを担う専門会社が作られました。
それが家賃保証会社です。
家賃保証会社は入居を希望する方の資産状況や、勤め先などの属性を審査します。
それまでの管理会社独自の審査も引き続き行われますから”ダブルチェック”となり、怪しい入居者をブロックすることが可能になりました。
なお家賃保証会社に関わる費用は通常、入居者負担です。
まだまだ昔の地主系大家さんよりは力(資産力)の弱い現代のアパートオーナーですが、これらの業者さんの登場で一時よりはマシになったと思われます。
そして、「サブリース」の登場です。
これは上記で述べた管理会社と家賃保証会社を使ったアパート経営(私はこの形態をとっています)をもう一歩、考えを発展させて「業者がオーナーに代わって”貸主”となりアパート経営全般を引き受ける」という業務形態です。
サブリース業者がアパート経営に関わる業務全般を行いますし、なおかつ35年間などの長期にわたり契約で取り決めた額の家賃を保証する、というシステムです。
手数料は15~20%と割高ですが、物件所有者(=アパートオーナー)は何もする必要がありません。
サブリース業者が実業務はすべてやってくれるので、かかった経費(修繕等にかかった費用も含む)を差し引いた残りがオーナーの指定銀行口座に毎月、決まった日に振り込まれるのです。
オーナーは好きな時に銀行で通帳記入するだけです。
この内容を聞いてサブリース業者と契約したオーナー様がかなりの数いらっしゃることと思います。
私もサブリース業者の門を叩いた
実は不動産投資を志して勤め人をしながら、合間に書籍を買い込んで勉強していた2015年の秋、私はとあるサブリース業者の門を叩きました。
向こうにしてみれば”カモがネギを背負って来た”ようなものです。
(本当は土地を持っている人が来てくれるほうがサブリース業者としては有り難いのですが、持っていない人にも土地を探して建物込みで売ることもできます。)
上司と連れ立って私の自宅に来ては詳しく説明し、良い土地が見つかったと言っては見積書とシミュレーション資料を置いていきました。
しかし、そのような業者は新築専門で建築費で利益を最初にガバッと稼ぐビジネスモデルですから、素人(しろうと)目に見ても利回りが極端に低く、35年ローンを組んで毎月の手残り(キャッシュフロー)はあるかないかの瀬戸際です。
年数が経つにつれて家賃は下がるので赤字になるのは時間の問題です。
妻が先にこれらのことを見抜いてくれて助かったのですが、妻に早々に相談していなかったら私は海千山千のサブリース業者に言いくるめられて契約していたかもしれません。
今、思い起こしてもゾッとします。
まとめたいと思います。
「サブリース」によるアパート経営は”経営”とは呼べない、と私は思っています。
だって”経営”しないのですから。
単なる”不動産への投資”です。
そういう意味では不動産投資信託(REIT)と同じだと考えたほうがいいと思います。
“おいしい話を持って営業にやってくる”という輩(やから)は不動産に限らず”無視する”に限ります
オーナー自身が動いて、苦労して、空室を埋めて、物件の掃除もする・・・。
これが「アパート経営」であり、「不動産賃貸事業」であると私は思います。
最後にワンポイントアドバイスです。
「物件も現金も資産も有り余っていて、相続税対策もしたい」というオーナー様は「サブリース」も選択肢のひとつになるかもしれませんがその場合でもサブリース方式での物件管理業務に特化して、なおかつ真摯に物件オーナーと向き合う良い業者を御自身で探されることをお勧めします。
一例として”日本管理センター(JPMC)”が挙げられるかと思います。
一時、お世話になったことがあるのですが社風も対応も良かったです。
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