プリウスは暴走ロケットなのか?

はじめに

最近、トヨタのプリウスという自動車について「プリウス・ミサイル」とか「プリウス・ロケット」という名を付けた記事が目立ってきました。

関連記事「プリウス暴走はこれで説明がつく」

最近多い、老人が運転するプリウスが病院やコンビニ、人込みに突っ込む事故を揶揄(やゆ)した表現でしょう。

私はトヨタ自動車という会社やハイブリッド車を特に”ひいき”にはしていないので中立的な立場から、また主に「産業機械設計者」としてサラリーマンを30年以上していた経験から本記事で意見を述べさせて頂きます。

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プリウスの操作系は独特

プリウスのシフトレバー操作に独特のものがあるようです。

「P」レンジ以外ではブレーキを踏んでいなくても操作可能。これは他の車でも同様のものがあります。

また「N(ニュートラル)」レンジに入っている時に、アクセルを踏んだ状態で「D(ドライブ)」レンジに入ってしまう。これも、他の車でもありますね。

ところが、「N」レンジでアクセルを踏んでも「空吹(からぶ)かし」が無いそうですね。

ガソリン車や他のハイブリッド車では「N」レンジでアクセルを踏むと「ブオーッ」と空吹かし音がして体感的に「あっ、ニュートラルだ!」と判るのですが、静かなままなのでスイッチのようなシフトレバーを右に動かしてN→Dにしてしまいます。この時に「ロケット・スタート」になるようです。

場面によっては「危険状態」に陥る

どのような場面でこんな操作をすることになるのか、いくつかのネット記事で解説されていました。

一番多いのが、コイン・パーキングから出る時。

遮断機の前で一旦止まり、無人の精算機で精算する際に「D」レンジのまま窓から腕を伸ばして、お金をコイン・スロットに入れます。

精算行動が終わって、遮断機が上がり再スタートする時「D」レンジに入ったままなら何の問題も無いのですが、なにかの拍子で「N」レンジに入った時が問題なのです。

“なにかの拍子”とは下記のようなものです。

・衣類がシフト・ノブに引っかかって、ノブが右に倒れた。

・腕がシフト・ノブに当たった

・シフト・ノブに物が入ったレジ袋を掛けていて、それに体の一部が触れてノブが右方向に操作された。

どれも、運転者が“無意識”に「N」レンジに”してしまって”います。

そして、精算を終えた運転者は「D」レンジのままだと思い込んでいるのでアクセルを踏みますが、”静かなまま”で再スタートしません。

後ろに後続車が何台か待っていれば、これだけでもうパニックです。

「なぜ動かないんだ!」とメーターパネルを見ると「N」の文字!!

慌てて「D」にシフトする。(この間、アクセルペダルを踏んだままです。)Dにシフトした瞬間、思わぬスピードで車がスタートするので、その後のハンドル操作を誤ります。

コイン・パーキングの精算後の出口はカーブになっていることも多いので植栽に突っ込む事例も多いでしょうし、人に接触した事例も多いと思われますが、いちいちニュースにはなりません。

やはり「危険」と言わざるを得ない

過去記事でも書きましたが、あらゆる危険な事象が起こりうる場面を想定して車をはじめとする「機械」は作られるべきです。

機械系はもちろん、電気系、ソフト系も必ず「フェール・セーフ」と「フール・プルーフ」を念頭に置いて設計されなければいけません。

しかし、プリウスの操作についての動画を見た限りでは、危険場面がいとも簡単に作られてしまうことが明らかになっています。

ある動画では「ブレーキを踏まずに、かつアクセルを踏んだままでN→Dの操作ができてしまうのは”欠陥”と言わざるを得ない!」とハッキリ言っています。

“「目立つ警告表示が出ている」とか「けたたましい警告音が鳴る」を無視した運転者が悪い”などと言っても、実際に操作ができて死亡事故が起きてしまうのだから言い訳にしかなりません。

むしろ一度、パニックに陥った運転者は大きな警告音なんか鳴ったら、余計に気が動転するのではないでしょうか。

“機械を設計・製作する”という行為はそこまで「安全」に「配慮」する必要がある”重大な行為”なのです。

上司に進言したかも・・・

これは想像の域を出ませんが、もしかしたらプリウスの開発担当者は責任者に危険状態に陥る可能性を進言したことが過去にあり、その時に会社側の都合か、上司の都合かで有耶無耶(うやむや)にされたのかもしれません。

「燃費最優先の車種なのに”空吹かし”なんてもってのほかだ!」とか「そんな滅多に起こらない事象まで想定するなんて、考えすぎだよ」とか、安全軽視の上司や経営陣に丸め込まれた可能性も否定できません。

賛否両論あるようですが・・・

とある自動車評論家がプリウスを擁護している記事を書いていますが「モーターの出力(馬力)は弱い」「警告音がなるのでガソリン車より安全」など、内容が「本当に自動車の専門家なの?」という感じです。

モーターはエンジンとは逆で、停止している状態からの発生「軸トルク」が最も強いですし、「警告音がけたたましく鳴る」からパニック状態を増長するのです。

それと、この方の文脈では車での「パニック状態」を経験したことが無いように感じられます。「パニック状態」を想定した上で語らないと、サーキットで「落ち着いて」「意地悪(いじわる)試験」を実施したところでほとんど意味がありません。

私は車やバイクでの”パニック”は数多く経験しています。

今回の記事に近い「操作系事故」では、自宅車庫にバックで入れる際に敷地入口の段差を乗り越えるのに勢いが余って急にバックするスピードが速くなり、体が前のめりになって(バック時にシートベルトを外していた!)アクセルをフルに踏む格好となりました。

後ろに人がいなかったので「車と車庫の大規模損傷」だけで済みましたが、人がいたらと思うとゾッとします。この事故の直後に、段差解消のために鉄製のスロープを設けました。

まとめ

「プリウス・ミサイル」の汚名返上対策としては「どうしても空吹かしが出来ない構造であるならば、N→D切り替えはブレーキを踏んでいないと出来ないようにすること」が必要です。

それにしてもハイブリッド車、電気自動車と変遷していく中で「機械のかたまり」だった車がいつしか「電気のかたまり」になり今後は自動運転車、つまり「ソフトウエアのかたまり」になっていくことに、どうも「危険」を感じてしまいます。

「機械のかたまり」だった時は「人間が全権を握っていた」のですが、今後はコンピュータに「全権」を委ねるのですから。先日の神奈川での「無人運転列車、逆走衝突事故」にその一端を垣間見たような気がします。

プリウスに限らず、自動車が「殺人凶器」や「重大インシデント対象」にならないように発展していって欲しいものです。

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◆重大インシデント
〔経営・産業 > 交通運輸 > ▲注目語〕

インシデント(incident)は、「でき事」の意。重大事故に至る可能性があったが、実際には事故につながらなかった潜在的事例をいう。
事故が1件起こる背景には、29件の軽微な事故、そして300件のヒヤリとするような経験が存在するという労働災害における経験則。これをハインリッヒの法則という。この軽微な事故とヒヤリの要因分析を徹底的に行い、事故を未然に防ぐことが重要である。例えば、大規模なエンジン損傷、滑走路からの逸脱、航空機同士の飛行中のニア・ミス(異常接近 near miss)などをいう。墜落、火災など乗員乗客が死亡や重傷を負った場合を事故とし、事故を未然に防ぐ手立てを検討し、対策を打つ。重大インシデントの分析は、事実の情報開示が重要で、航空に限らず、鉄道、道路、船舶の事故にも活用されている。国土交通省では、重大インシデントの事例を公開している。
現代用語の基礎知識2014年版より引用

終わり

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