発想を転換する

洗濯機の事故

ドラム式洗濯機に幼児が閉じ込められて窒息死するという痛ましい事故のニュースが時々報じられます。

現象としては大人が気付かないところで、自分で洗濯機の中に入り込み、中からドアを閉めてしまいます。

そうすると中からいくら押しても、しっかりロック(留め金)が効いてしまっていて開きませんし、洗濯中の水漏れ防止のためにゴムパッキンが貼りめぐらされていて気密性が保たれてしまっていますので窒息するというわけです。

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我が家もドラム式洗濯機

我が家でも13年ほどドラム式洗濯機を使っており、購入した当時は娘二人も幼児でしたから、そのような悲惨な事故に遭っていた可能性は十分にあり得ました。子供たちが健康にすくすくと育ってくれたのは運が良かったと言えるかもしれません。

あらためて我が家のドラム式洗濯機を見てみますと、洗濯物を出し入れしやすいように大きな開口部となっており、ファミリー向けに庫内の空間も広いです。(冒頭のアイキャッチ画像を参照願います。)

そして、好奇心旺盛な幼児はジャングルジムで遊ぶかのように中に入っていくのでしょう。

↑半開きの状態

↑閉めた状態。この洗濯機は洗濯容量8kgです。

↑扉ロック部分の拡大画像。基本的な扉部分の構造は13年前と今の機種で大差はありません。

開口部の高さは、洗濯機パンを含めて床からおよそ55cm。幼児でも十分よじ登れます。開口部の淵も手をかけやすいです。

これで大人が留守だったら。幼児だけを家に置いて留守にすることは考えにくいですが、現代ならスマホでついついネットサーフィンに夢中になってしまいますと留守にしていることと同じになります。

大事な二つの設計思想

機械や装置モノでは操作者・作業者が危険に陥るような、誤った行動をしないように(できないように)機械的・電気的に安全に配慮した設計をすることを「ポカよけ」、あるいは「バカよけ」と称します。

英語では「フール・プルーフ」です。

もう一つ「フェイル・セーフ」という設計思想があります。

機械を設計する上での大事な考え方のひとつが、異常な操作をする人為(じんい)的なミスを防ぐ、あるいは機械自体が万一異常な状態に陥った場合でも必ず安全側に働く(動作する)ようにハードやソフトを設計することです。

高度経済成長期から、生産設備を作る者はこの二つの設計思想を大前提にして作業者を危険から守ってきました。

機械のおかげでいくら便利になるとしても、作業者が死亡する事故が起きる可能性がわずかでもあれば「良い機械・装置」とは言えません。

そういう意味では、昨今(さっこん)増えている高齢者運転の車による死亡事故の多さに対しても、「フール・プルーフ」と「フェイル・セーフ」を前提としたハード・ソフト両面での早急な対策が必要です。

決定的な措置は機械側ではなされていない

家電量販店の洗濯機売り場に行き幼児窒息事故対策でなにか進歩しているか見てみたところ、抜本的な対策は施されていないようです。

せいぜい「ロック不可機能」が付いたくらいです。

これは洗濯機扉上部に設けたスライドレバーを「ロック解除」側にしておけば、扉を閉めようとしてもロックがかからないので閉まらないというものです。

また別の方式ですと扉はロックされるのですが、中から強く押せば開けることができるというものもありました。

ここでもナカシマは逆転の発想

私が家電メーカーの洗濯機開発担当者ならこう考えます。

普段は扉を閉めきることができないようにします。

ロックが掛からないので、幼児も自由に出入りして構いません。

洗濯をする際には洗濯物や洗剤をセットして、いざスタートする時に扉を閉じて手で押さえておきます。

そして、スタートスイッチを押した瞬間に扉ロックが掛かる構造に設計します。

あとは従来の洗濯機と同じです。洗濯が終われば自動的にロックが解除されます。

つまり洗濯している最中のみ扉はロックされて、それ以外の時は”常時ロックが解除されている”ようにするのです。

すでに多くの家庭では庫内を少しでも乾燥させるために、普段から扉は全開もしくは半開にされているのではないでしょうか?

「左手で扉を押さえておいて、右手でスタートスイッチを押す」という少々面倒な操作になるかもしれませんが、幼児の命を救うほうがよっぽど大事です。

友だち家族の御子息を預かって遊ばせている時に事故が起こるかもしれないわけですからね。少しの手間は目をつぶりましょう。

特許は取れそうにない

私は特許とか意匠登録などの知的財産権取得にも興味があるので、本件に関しても特許取得が可能かどうか、各県にある「知財総合支援窓口」という国の出先機関に出向いて聞いてみました。

すると、基本的に現存する機能を減らす(削除する)モノやコトに対しては知的財産権が適用されないとのこと。

あくまでも”付加する”モノ・コトが対象だそうです。

今回の事例では、「通常状態での扉のロックを無くす」ので検討の対象外になるそうです。

”省くことによって画期的な発明になる”ことも、それなりにあると思うのですがダメなんですかねえ?

まとめ

「普段、扉はロックされているべきである」というのは、あくまでも家電メーカー側の”固定観念”です。

「使う者の安全に配慮する」ことが家電でも車でも”大前提”です。

「ものごとの見方を変える」という意味で、今回と通じる記事がありますのでよろしければ参照してください。

関連記事「ものごとの断面二次モーメント」

終わり

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