7.三つめの物件、満室へ

リノベーション工事、終了。

10月の長雨もあって大規模修繕は一カ月半ほどかかってしまいましたが、その甲斐あって、物件は見違えるようにキレイになりました。

415万円は安いと思います。

工務店によっては、800万円以上いく場合もある工事だったと売買仲介業者も安さにビックリしていました。

それはいいのですが、新しい管理会社も張り切って入居者付け活動をしてくれている割に反応が薄い。

家賃は共益費、水道代込みで21000円と地域最安値です。

「閑散期だからこんなものかな」と自分を納得させていました。

年が明けても、引き合いがありません。

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配管破裂事故、多発!

おまけに、数十年に一度という寒波に見舞われて凍結による給排水配管の破裂トラブルが相次ぎました。

空室が多く、また空室期間が長くて水の流れが無いのと築年数が古く配管が経年劣化していたことが災いしたものと思われます。

複数の空室の、内外配管が立て続けに壊れました。

水栓機器や給湯器を無償提供してくれているプロパンガス会社や懇意にしている水道業者が親身になって対応してくれたおかげで、ひとつずつ解決していきました。

大規模修繕をしてくれた工務店は、漏水でダメになったふすまや押し入れを迅速に修理してくれました。

火災保険が大活躍。

そして、それらの修理費が火災保険で賄えるように損害保険代理店の担当者が尽力してくれて、すべての修理費用が保険で賄えたのです。

※火災保険の重要性は、この記事を参考にしてください。

必要な保険とは

トータル150万円ほどの保険金が、早期に支払われました。

持つべきものはビジネスパートナーです。

この時、痛感しました。

また、この物件は貯水タンクと給水ポンプを備えているのですが大元の水道管と貯水タンクの中の水も凍ってしまい、1月下旬の5日間ほどなんと、このアパートは飲み水が使えなくなってしまったのです!!

私は顔が青ざめました。

大元の水道管は塩ビパイプとの間にコンクリートが詰められており、カセットコンロで沸かしたお湯をかけても、中の凍った水道管まで熱が伝わりません。

給水ポンプも元電源を切りました。

水が供給されないまま空(から)運転すると、ポンプが焼き付くからです。

文字通り”お手上げ状態”です。

入居者のうち、一名が失踪中!

不幸中の幸いですが、この時の4名の入居者には迷惑がかかりませんでした。

どういうことかと言いますと女子大生の二名はこの断水期間中、県外の実家に帰っていました。

社会人の一人は長期出張中。残りの一人は、中国籍の技能実習生で数日前から失踪していて留守だったのです。

ちなみに失踪した実習生への公示送達やら強制執行の裁判所手続きを私自身がすべて一人でいろんな人に教えてもらいながらやりました。

管理会社にやってもらうと、かかった費用以外に動いた人件費もオーナーに請求されるからです。

私は専業大家で自分が動けますし、対象人物が不在で今後現れる可能性が極めて低いこともあり、勉強がてら自分ですべてやってみることにしました。

簡易裁判所の法廷にも、原告として相手不在のまま立ちました。

苦労した甲斐があり、約4カ月後に明け渡しが完了して工務店にリフォームしてもらいました。

この部屋の損害は踏み倒された家賃6カ月分や裁判関連費用、リフォーム代合わせて約50万円です。

前のオーナーが入居者付けしており、家賃保証会社も使っていないし連帯保証人も失踪者本人が適当に書いたものでした。

全額、自腹で泣き寝入りです。

やっと融(と)けた!

女子大生が帰省から戻ってきたときには、凍結も溶融して配管内を水が流れるようになっており、事なきを得ましたが今、思い返してみてもハラハラ、ドキドキします。

凍結破裂事故は1月下旬から始まって、3月初旬まで続きました。

自宅から一番遠い物件ですが昼に夜にほぼ毎日通ってかなり疲弊しました。

アパート経営者にとって3月と言えば繁忙期が終わる頃で、この月に満室にしなければいけません。

ましてや学生アパートの激戦区なら、なおさら死活問題です。

失踪者がいたので実質、入居しているのは12戸中、3戸のみです。

9戸の空室に対してこの繁忙期に入居が新たに決まったのは3戸のみに終わりました。まだ6戸が空室。

つまり、入居率50%で繁忙期終了です。

最悪の事態です。

管理会社はトラブル対応や入居者付けに尽力してくれましたが、ひとつには凍結事故の対応期間中(=修繕工事中)は入居募集を中止せざるを得なかったことが原因としてあります。

(当初、管理依頼していた地元のおじいさんは、入れ知恵が入ったのか断りを入れてきたので別の会社にお願いすることにしました)

いずれにしても4月から利子に加えて元金返済も始まるオーナーにとっては”赤字物件”になることが確定してしまいました。

こういう状態になったら次の瞬間、オーナーである私はどのような行動をとると思いますか?

答えは、”売却活動開始”です。

赤字を垂れ流すことが確定している物件を所有している意義は”ゼロ”です。

すぐ金融機関に”売るけど良いか?”と予告して言質(げんち)を取り、購入した時の仲介業者や懇意にしている不動産屋さん、計4社に売却活動を依頼しました。一般媒介です。

売却活動を開始したが・・・

数日後、管理会社の担当者がどこで聞きつけたのか、慌てて電話してきました。

「あの物件、売るんですか?!」

「来月から赤字物件になるんだから売らないオーナーはマヌケかバカでしょ」

「しかし、それは契約条項違反になってしまいます」

管理契約書をあらためて見ますと、たしかに”本物件の売却を検討する場合、入居者に迷惑をかけないために、オーナーは事前に管理会社に相談すること”と明記してあります。

また一年も経たないうちに管理契約を破棄されると、それまで掛かった経費すら回収できない、とも言われました。

この管理会社はよくやってくれますし、入居者付けも得意なほうと業界でも評判なので、できれば今後も付き合っていきたいと思っていました。

二つ目の物件の管理もお願いしていますが、たしかに3カ月ほどで4空室を埋めて満室にしてくれています。

それでも思わず売却に走るほど”マイナスのキャッシュフロー”というものはオーナーに強烈な負のパワーを浴びせます。

“管理会社を承継する”ことを条件に、管理会社から了承をもらい売却活動を継続していました。

しかし、一向に売れません。

12%と表面利回りも悪くないし、価格は2500万円と適正なはずですがやはり半分空室なのと立地が良くないことが響いているのでしょう。

借り手が付かない、売るに売れない、来月からオーナー持ち出しが始まる・・・。

不動産賃貸事業の最悪の事態を経験することになりました。

「借り手」も「買い手」もいない

どうすれば良いか、真剣に考えた私は物件近くの賃貸仲介業者をかたっぱしから挨拶して回りました。

もう、恥も外聞もありません。

“この物件の入居者付けを、何卒よろしくお願い申し上げます!”と自作の名刺を配りながら頭を下げて回りました。

それが奏功したのかどうかわかりませんが、真夏の閑散期に申し込みが立て続けに入ったと管理会社から連絡がありました。

学生3名、社会人3名。

管理会社のアドバイスで家電3点セット(洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ)をサービス品として備え付けたのと、初期費用減額キャンペーン(敷金、礼金ゼロ、家賃保証会社および家財保険の初年度分と鍵交換費用オーナー持ち)も効いたのでしょう。

10月には一気に満室の運びとなりました。

あきらめたら終わり

この物件は私の体を大いにダイエットさせてくれました(笑)。

また大家(おおや)としての心構えをはじめ、かなりのことを経験させてくれました。

凍結事故が頻発した時は正直「不動産投資なんか、やらなければよかった」と思いました。

人間が一番弱くなっている時でしたね。

落ち着いた現在は数々の教材を提供してくれたこの物件に感謝しています。

管理会社とも良好な関係が築けております。

今はこの物件を売却する意思は消え失せています。

数年所有して満室経営して、とりあえずこれまでの損失を回収したいと思っています。

諦(あきら)めなくてよかったです。

これからも諦めずに「不動産賃貸事業」を続けていきたいと思います。

終わり

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