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「そっちよりこっちが大事」なコトたち
不動産賃貸事業を経営していると「本末転倒」と思われるモノゴトに遭遇することがあります。
ネット記事やブログ記事でも見かけるので、思いつくまま列挙したいと思います。
「オートロック付きの物件」にする?
不動産投資家のブログ記事で見かけたのですが、所有物件のエントランスのオートロックが故障してロックできなくなったとのこと。
新築からまだ7年半しか経(た)っていないのに、もう壊れるものなのかと嘆いておられます。
保険が適用されれば金銭的には一安心ですが、修理が完了するまでは、オートロックが気に入って決めた入居者にはメリットが無くなります。
また、その物件のオーナーにとっても、物件価値を高めるために高価な設備を導入したのに、逆に入居者に迷惑を掛けることになり、まさしく”本末転倒”です。
解錠したすぐあとに付いて入ってくる”コバンザメ・エンター”など、オートロックも色々とデメリットがあるので、私は自分の物件では付けるつもりがない設備です。
生命保険に入り、火災保険に入らない?
個人なら生命保険、法人なら社長(オーナー)向け生命保険の説明を保険会社や金融機関から説明を受けて、一生懸命検討するのに、収益物件の火災保険には入らない、もしくはオプションをケチる。逆ですね。
「火災保険」と「生命保険」は、完全に分けて考える必要があります。
火災保険は「損害保険」です。天災や事故に遭った際に、とても自分自身や自分の法人の資金で賄えない金額が必要になる場合に備えておく保険です。
人身事故や物損事故を起こすかもしれない場合に備える、”自動車保険(任意保険)”と同じ役割です。
一方、生命保険は自分に万一のことがあった場合や病気・事故に遭った場合に残された者が困らないように加入する、相互扶助の仕組みの壮大な”お守り”です。
火災保険や自動車保険の「損害保険」は”他者に迷惑を掛けた場合の償い費用”を賄う保険、生命保険は自分や自分の家族が困らないようにしておく”身内のための保険”です。
また生命保険がカバーする病気・事故については、「国民、皆(みな)保険制度」が充実している日本では過剰サービスですし、収益不動産を持って事業をするのですから残された家族にも資産は残ります。
以上のことから、まず手厚く掛けるべきは「火災保険」であり、「生命保険」加入不要です。
手持ち資金が潤沢に有りすぎて、節税したい場合にのみ、生命保険の加入を検討すればよいです。
関連記事「火災保険の重要性」
自治体に言われるままに下水道に接続する?
収益物件のうち、築古の戸建てやアパート、マンションを購入した場合、下水処理が「公共下水道」ではなく「浄化槽」の物件があります。
そして、その物件のすぐ傍(そば)まで自治体の下水管が来ている場合、物件購入後に自治体から「すみやかに下水道に接続してください」と通知が来ます。
これを鵜呑みにして自治体に言われるままに、下水道接続工事を実施するオーナーさんもいらっしゃることと思います。
ここで、よく考えてほしいのですが、下水道に接続して嬉しいのは誰でしょうか?
答えは、任務を遂行できた「その自治体の担当職員」のみです。
物件オーナー、その物件の入居者はデメリットしかありません。
「現在、使っている浄化槽が傷んで、まもなく大きな故障に見舞われる可能性がある」などの場合は、やむを得ず下水道に接続する選択もありますが、まだ十分に働いてくれる浄化槽を壊して、数百万円をかけて「下水道への接続および浄化槽閉鎖工事」をするメリットはどこにもありません。
・工事費を自治体が補助してくれるわけでもない。
・入居者が負担している水道代が約二倍になる。→大量退去につながる恐れあり。
・地震や豪雨などの災害時に公共下水道が使えなくなることがある。浄化槽なら貯めることができる。
これも前項の生命保険と同じで、「個人の手持ち資金が潤沢に有りすぎる」あるいは「法人の利益が有りすぎて節税したい」などの場合以外は、浄化槽のまま運営するのが正解です。
その物件の老朽化が進み、建物を立て替えて運営を続けたい場合に、下水道に接続すれば良いのです。
関連記事「浄化槽と下水道」
法人設立後、社会保険加入手続きをする?
法人を設立して「不動産賃貸事業」を運営されているオーナーさんも多いと思います。
個人ではなく法人で収益物件を買い進める理由としては下記があります。
・いろんな面で節税になる。特にオーナー自身が役員報酬という給料制なので、法人は経費にでき、社長(オーナー)は確定申告できるので、これだけでも”ダブル節税”になっています。
・プライベートと事業(仕事)の区別をしやすい。特に金銭面。
・物件を買い進めると、融資を受ける際に契約者が法人、連帯保証人が社長だけでよくなり、家族や親族に迷惑をかけずに済む。
・「個人事業」に比べて、「事業を経営している」実感が湧く。顧問税理士から毎月アドバイスを頂く際に、赤字にしないように、また少しずつでも良いので右肩上がりの経営をしたいと思う。
そして、法人を設立した後にやってくる通知が「社会保険加入申込書」です。最寄りの社会保険事務所から郵便で届きます。
社会保険とは、厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険、介護保険です。
これらの掛金を毎月引き落とす手続きをしなさいというものです。
弱小法人にとって、これらの固定費はとても大きなダメージです。しかも、社会保険費用は今までもそうですが、今後も増加傾向にあります。
「社会保険」も「下水道」と同じ構図で、喜ぶのは社会保険事務所の担当者や国だけです。
経営者にとっては”苦痛”以外の何物でもありません。
通知には御丁寧に、「”一人社長”の法人でも加入することになっています」と書かれています。
しかし、これはグレーな部分で”社会保険とは雇われている労働者を守るため”の制度であり、社長は”雇われている労働者”ではありません。
税理士から聞いた話ですが、一度、加入手続きをしたものの、あまりにも負担がきつ過ぎて、社会保険事務所に解約手続きに赴(おもむ)いたが、担当者に「基本的に解約はできません」と言われた経営者がいました。それでも怒り心頭のその経営者は解約書類を叩きつけて帰っていったそうです。実際に法人で賃貸事業経営をしている読者には、この気持ちがお分かりかと思います。
事業規模がかなり大きくなって、人を雇わないと回らないくらい繁盛して、実際に従業員を雇ってから加入手続きをすれば良いです。
関連記事「社会保険とはどういうものか」
まとめ
以上、挙げたいずれの例も「良かれと思って、あるいはやって当然と思っていたことだが、実はそれよりももっと大事なことがある」というものばかりです。
特にサラリーマンをやりながら、あるいはサラリーマンをやめて「不動産投資」という「賃貸事業」を始めた方は、「勤め人」属性から「経営者」属性に”切り替わった”という事実を意識するのが難しいと思います。
サラリーマンでは、ただ真面目(まじめ)に法律や会社のルールに従って日々、過ごしていればよかったのですが、収益物件をオーナーチェンジで購入出来て不動産投資の実務を開始した途端、”事業経営者”として、さまざまな場面で利益を最大化するための判断が必要になります。
こうして文章を読んだり、言葉を聞いたりするだけだと、ピンと来ないと思います。
自分で判断できない時は、先輩大家に直接聞いたり、不動産投資家ブロガーに問い合わせしたり、管理会社に相談して、最終的には自分自身でどうするか結論を出して実行する。
これを繰り返していると、自然にスキルが上がっていって相談や質問の回数が減っていきます。
それが、とりもなおさず”「不動産賃貸事業経営者」として成長していっているという”証(あかし)なのです。
終わり
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